子供を駆り立てる原衝動
赤ん坊は、実際にできるようになるかなり前から、
お喋りや一人歩きやお座りをしたがる。
ベビーベットに寝ている赤ん坊も不器用に手を伸ばして物を取ろうとするが、
正確に狙いをつけて物をつかめるようになるのはずっと後である。
寝返りに関しても、実際できるようになる前から、それらしい仕草を繰り返す。
これが原衝動である。
こういった衝動は果たしてどこから来るのだろうか??
親の模倣ではないことは確かだ。(盲目の子供も同じ行動をする)
我々大人は、自分の意志で行動する。
では赤ん坊も自分の意志でそういった動きをしているのだろうか?
答えは否、である。
乳幼児、小さい子供には意志がないのだ。
乳幼児にあるのは、古い脳のプロセスから来る『原衝動』だけである。
これは意外で当惑させられるような事実だが、
三歳くらいまでの小さな子供には、
大人が言う意味での意志や意図的コントロールがない。
この時期の子供は、操り人形が糸に操られるように、
自分の原衝動に突き動かされている。
古い脳から生まれるこの原衝動は、
子供の身体を実際の世界との相互作用へと駆り立てる。
小さな子供には、
「わかっていながら親の言うことを聞かない」とか
「自分の意志であえて行儀の悪いことをする」といったことはできない。
小さな子供は自分を動かしている生来の原衝動に従うことしかできないのである。
この原衝動には、まったく意味内容のようなものがない。
原衝動とは、現実世界と相互作用させるために、
子供の身体を初めてのぎこちない試みに向かわせるただの衝動である。
こうした運動と、その結果生じた知覚体験は新しい脳に記録される。
例えば、何度もお座りの練習を繰り返すことにより、
情報とそれに伴う身体的協調を伝えるリズミカルなパターン化はスムーズになり、
身体の反応もそれに応じてスムーズで確実なものになり、
お座りが成功したとき、そのパターンも完成され、成功したものとなるのである。